ざわつくCBD

 憤りより少し感心している自分がいる。さて、大麻新法の施行に向けてざわめきが収まらない。大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」のいわゆる成分規制に合わせて厚労省が発表した栽培可能な大麻のTHC濃度は0.3%だ。それだけならある意味世界標準でなんていうことはない数値だが、付随して出てきたのは流通に関してはオイル製品:10ppm0.001%)、飲料製品:0.1ppm0.00001%)、それ以外の製品:1ppm0.0001%)だ。えっ、0.3じゃないじゃん、検査分析できるの?NDで良いじゃん!と叫びたくなるほどの数値だ。THC0.3%程度に落ち着くことはなんとなく業界常識で0.2%になったら不安だなぁくらいの話しが出回っていた。確かに、確かに予想通りの0.3%だが実質THC0%を提案してきた厚労省の方針にCBD業界の衝撃は大きい。THC0.3%という数値だけが一人歩きして、CBD業界が完全に出し抜かれたカタチだ。

   ロビー活動してたんじゃないのかい、とCBD業界関係者にツッコミを入れたいところを我慢して話を進めると、THC0.3%という見かけ上の数値で安心し、ツメが甘かったこともあるもだろうが、まぁ、厚労省の方が一枚も二枚も上手だったということだろう。してやられたって感じなんじゃないだろうか。実際、この数値じゃ壊滅しちゃうよねCBD業界。現在、CBD業界から厚労省への抗議に向けての抗議や抗議準備が進んでいる。黒船もあれば抗議を後押ししてくれるだろうが、下手すれば内政干渉の国際問題。とりあえず、やりやがったな厚労省!と大人の交渉術を学ばさせていただいているところだ。だってこのまま通れば合成カンナビノイドどころじゃなくなる。現状、医療用CBD製剤の「エピディオレックス」以外は全滅しちゃいそうな数値だ。あっ、CBD業界的には法律を遵守してTHCは麻薬で悪者だという意見が主流だから厚労省と意見の相違は無いのかな。あれ、それじゃ慌てる必要はないなぁ。厚労省とCBD業界の意見は一致している。多少のTHC混入は見逃してね、は甘い考えだ。

   基準を厳しくすれば、それを遵守するために検査機関は必須だ。種の品種もしっかり検査して、製品もしっかり検査して麻薬成分であるTHC流通を限りなく0%にする。検査費用もかかる。CBD原材料の価格も少しは落ち着きを取り戻したようだが最高値の時とは比較にならない価格帯で付加価値をつけての販売にも限界があるだろう。税関の検査も厳しくなり、これまでの書類上の話しだけのグレーさは無くなるだろう。立ち消えたかにみえる流通販売者資格なんてできちゃったりする余白も今回の新法の中にあるしね。瑕疵だらけの法律だと思っていたが、ある意味、上手くできた建て付けになってる。それでも運用には瑕疵だらけだとは思うけれども。

   今回の法改正で優れた点は4条の二を無くした点だ。旧法にあった「二 大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。 大麻から製造された医薬品の施用を受けること。」。これが消えたことで医療として使える。たいそうなことしないでここだけ無くなれば良かったんだけどなぁ、なんて今さら泣き言を言っても仕方がない。患者からすれば待ちに待った薬が使えるようになる。創薬を推進する国の方針によって新しい薬も生まれ、これまであまり表に出て来なかった医薬業界がしっかりと表に出てくるのだろう。CBDの効果や良さはCBD業界がしっかりと世に浸透させてきた。そこまでがCBD業界の役割で今後は医薬業界に引き継がれていくのだろう。ってなんだかなぁ。THCをいじめ抜いたつけが後を引きずることになっちゃうなぁ。

   厚労省は今月末までパブリックコメントを募集している。抗議やさらなるロビー活動も含めて、せっかくの機会だから応募し意見表明する必要がある。たかがTHC、されどTHCだ。そして付け加えると、たかが大麻、されど大麻だ。

 

松浦 良樹〈Matsumura Yoshiki〉プロフィール

 1970年生まれ。環境問題や自然エネルギー、伝統文化などをメインテリトリーとするライターとして『AFF』『GQJAPAN』『環境ビジネス』『Earth Journal』など様々な媒体に執筆。大麻関連媒体では『HEMP LIFE』『HEMP TODAY JAPAN』など。

 NPO法人日本麻協会理事などを務め、20167月に理事長(当時)・沼隆とともに国立京都国際会館で開催された「第1 世界麻環境フォーラム」(別名「京都ヘンプフォーラム」)と呼ばれる「IHEFInternational Hemp Environmental Forum)」の初イベントを開催した。このイベントには世界中から大麻の専門家や産業家の他、日本からは安倍昭恵総理夫人(当時)、京都市長、京都最古の神社である上賀茂神社宮司をはじめ、大麻に理解のあるメンバーが広く参加した。

 また、蚊帳研究家として蚊帳の歴史や文化の研究に努めるとともに、ヘンプ100%の藍染の蚊帳やヘンプストロー、ヘンプフィルター、その他、衣食住に関わる大麻アイテムの開発に携わり、普及活動を続けている。

 2019年ネパールで開催された「ASIA HEMP SUMMIT」において「大麻と蚊帳の博物館の創設」「日本の祈りに関連した大麻」に向けた企画で起業家賞を受賞。

 また、タイ王国バンコクで開催された「アジア国際ヘンプエキスポ 2022 」では二大パビリオンのひとつ「golden  hemp  pavilion」の責任者を務めた。

 2023年、青淵渋沢栄一翁顕彰会〈士魂商才〉賞を受賞。

 アジア国際ヘンプEXPO2023では日本サイドの責任者として二つのブースとメインステージでのパフォーマンスをプロデュースした。

 

現在、日本の基層文化である大麻の普及と啓蒙やタイと日本を結ぶ活動などを展開中。