2月19日、合成麻薬LSDに似た「1D-LSD」と呼ばれる成分を染みこませた紙片や、大麻類似成分を含む6製品が規制対象となった。LSD系でいえば1Vあたりから1Dとなり、すでに違う化学式のものが出回っているし、これまで同様しばらくはいたちごっこなのだろうな。いわゆる脱法や危険ドラッグブームの時のように規制が事故を生み出すような状況は避けたいところだが、向かっている方向はいつか来た道のように見える。また、大麻類似成分についても昨年12月に38製品の販売などが禁止されており、規制対象は今回の6種と合計44製品の規制となる。これまたなんだかデジャヴだ。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240219/k10014363531000.html
(合成麻薬LSDに似た成分含む製品など6種類 販売禁止命令 厚労省 2024年2月19日 NHK)
合成麻薬LSDに似た成分含む製品など6種類 販売禁止命令 厚労省
それはともかく、二回分飛ばしてしまったので1ヶ月ぶりの投稿となるんだけれども、大麻取締法の法改正後の「解禁」「規制」「逮捕」「使用罪」などのキーワードは単なる言葉としてただただ表層を流れているだけに感じられる。
https://www.sankei.com/article/20240214-XTJ4QPTF6FPRPBHH5HL74H25X4/
(独自 大阪の大麻グミ製造会社を捜索 違法成分含む商品販売の疑い 2024/2/14 産経新聞)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/niigata/20240220/1030028465.html
(国の承認受けず大麻由来のマッサージオイル販売か 会社員逮捕 2024/2/20 NHK新潟NEWS WEB)
表面的に流れる大麻のニュースはこれまで同様に所持による有名人の逮捕や製造元や販売店などへの立ち入りが取り上げられて、紙面やネットでは「大麻」の文字が並ぶが、その多くが大麻そのものではなく、大麻類似成分。しかも逮捕者が知っていたのか確信犯なのか、それとも別のまだ規制されていない成分だと思っていたのか、規制対象となっている大麻そのもではないものばかりだ。そして、まだ規制されていない成分であっても、調査名目による事実上の販売禁止の措置まで取られている。まぁ、化学式上はまだまださまざまあるから、カンナビノイド類の包括規制でもすれば全部ダメになるのだろうけど、そこに関しては様子見なのだろう。何より、「大麻」の文字がひとり歩きし、より一層の「ダメ絶対」的なイメージと「使用罪」適用に向けた動きのようにも見えるが、逮捕者の多くは現行の大麻取締法ではなく麻向法による摘発だから、あくまでも麻薬としての扱いだ。そうであるならば、大麻は麻薬ではなく、大麻由来の特定成分は麻薬ということになっていくのだろう。
そして、さらにそうであるならば、麻薬原材料となり得るCBDはどういう扱いになっていくのかによって今後の動きは大きく変わってくると思うのだけれども、まだまだ不透明。麻薬であるからこそ医療麻薬として医療の現場で使うことができるともいえるが、麻薬扱いなら法改正後の使用罪なんてたいした話ではない。CBDどころかCBNやらなんやらも極めて難しいところにあるといってよい。今後は大麻由来ではなく、CBD由来とかCBN由来とかより細分化していく方向性もあるけどどうなんだろう、テルペンの問題もあるし。さてさて。
法は法であり、誤解を恐れずにいえば、合法か違法かには僕自身はあまり興味がない。所詮メリットとデメリットの兼ね合いにすぎない。必要な人には必要であり、必要ない人には必要ない。合法だからOKの人もいれば違法なら必要ないという人もいるし、合法だろうが違法だろうがだめなもんはダメという人もいれば合法だろうが違法だろうが必要という人もいるだろう。それは医療としても嗜好品、いわゆるキメものとしても同じだ。必要か必要でないか、使うか使わないかの最終判断をどこに求めるかを強制する気はない。日本だけでなく、世界的に個人の問題と社会の問題の垣根があやふやで善悪すら曖昧でさまざまな価値観や道徳観が揺らぎ、混乱と混迷を極める過渡期の世界で大麻はどうなっていくのだろうか。大麻どころではないが、だからこそ大麻なのだというパラドクス。大麻もまた世界的に過渡期にある。正解は後からついてくる。とりあえず近々の日本においては5年の猶予がある。
こわすのは今
ためされるのも今さ
こわがる前に 立ちあがってみせなヨ
こわすのは今
ためされるのも今さ
たち止まる前に 走り出してみせなヨ
書きながら、PEARLの「Hey Kids Move」が頭の中を流れちゃったりするけど、走る前に考えるのも大事なことだ。
たかが大麻、されど大麻。
松浦 良樹〈Matsumura Yoshiki〉プロフィール
環境問題や自然エネルギー、伝統文化などをメインテリトリーとするライターとして様々な媒体に執筆。
NPO法人日本麻協会理事などを務め、2016年7月に理事・長岡 沼隆とともに国立京都国際会館で開催された「第1回 世界麻環境フォーラム」(別名「京都ヘンプフォーラム」)と呼ばれる「IHEF(International Hemp Environmental Forum)」の初イベントを開催した。このイベントには、世界中から麻の専門家や産業家の他、安倍昭恵総理夫人(当時)、京都市長、京都最古の神社である上賀茂神社宮司をはじめ、大麻に理解のあるメンバーが広く参加した。
また、蚊帳研究家として蚊帳の歴史や文化の研究に努めるとともに、ヘンプ100%の藍染の蚊帳やヘンプストロー、ヘンプフィルター、ヘンプなどの衣食に関わる大麻アイテムの開発に携わり、普及活動を続けている。
2019年ネパールで開催された「ASIA HEMP SUMMIT」において「大麻と蚊帳の博物館の創設」「日本の祈りに関連した大麻」に向けた企画で起業家賞を受賞。大麻の専門店「麻草屋」代表でもある。
また、タイ王国バンコクで開催された「アジア国際ヘンプエキスポ 2022 」では二大パビリオンのひとつ「golden hemp pavilion」の責任者を務めた。
2023年、青淵渋沢栄一翁顕彰会〈士魂商才〉賞を受賞。
アジア国際ヘンプEXPO2023にも日本サイドの責任者として二つのブースとメインステージでのパフォーマンスをプロデュースした。