混乱と矛盾の交錯と同居

 「ダメ、絶対」の根拠がどんどん弱くなっている。どうするんだろうね、日本。516日にはとうとう米合衆国のバイデン大統領が「長年の不公平を覆すための重要な対応」「大麻に対する誤った対策により、あまりにも多くの人の人生が狂わされてきたが、私はこれを正すために尽力する」なんて発言をした。これは30年前、厳しい法律の策定に関わったバイデン大統領自身のこれまで以上の明確な方向転換でもある。これまで米は50州のうちの24州とコロンビア特別区の娯楽目的での使用、38州での医療目的での使用が合法。これまで州法によりさまざまな違いがあったが、パブリックコメント期間やら議会の承認やらを経て米全体で変わっていくことになるだろう。ちなみにバイデン大統領が個人的に方向転換するのに30年。国だと100年単位。日本はどうだろう。そろそろ日本でも影響力のある政治家や政治家を目指す人からの大麻に対する発言や動きも出てくるタイミングだ。法改正及び施行が決定しているとはいえ、今まさに大麻についてよりさまざまな角度から議論すべきタイミングなんじゃないかな。THCは悪でCBDは善とか大麻は麻薬とか麻薬じゃないなんて言ってる時なのかなぁ。いろんな混乱と矛盾が交錯して同居している。

それはともかく、米の連邦法が変更になるということは、ドイツの合法化とともにまたまた国際的影響力のある国の変更となる。日本がまだ先進国かどうかは置いておいて、ひとまず多くの先進国での大麻への考え方と法律の変更はWHO のあらたな基準が生まれることにつながる。いわゆる先進国のリードと世界の情勢によって世界基準はなんとなく、そして確定されたものへと変更されていく。

 それは、日本政府の見解として厚労省が法律の根拠のひとつと挙げるWHOのスケジュール23への変更されるということだ。毒にも薬にもならない物質から毒にも薬にもなる物質と認定され、そして有用な物質だと世界基準で認めることになる。そのような中での日本における新たな法の施行が間近なのは不合理に過ぎる。

 一度運用が始まってしまえば、始めちゃったからやめられないゴミの分別やゴミ袋販売などなどのような惰性や利権やしがらみがまとわりつき、不要であることがわかりきっていても目をつぶって知らないふりをする日常が続くに違いない。

 それとも、なし崩し的な非犯罪化で忘れた頃に取り締まる自転車通路のような見せしめ逮捕がおこなわれるようになるのだろうか。

 法は法に則り施行&運用する必要がある。しかし、すぐに齟齬と瑕疵が発生することが予測あるいは確定している法をそのまま施行するのは法の精神にはあっているのだろうか。世界的な薬物政策の失敗という意見もあるが、それだけではないだろう。ブレーキとアクセルの狭間で大麻は翻弄され、人も翻弄されている。日本国内のみならず、世界中も含めて、今一度、そもそも論や定義の問題から、そして人権の問題も考慮しつつ、環境や伝統文化も含めて、たちかえって考えてみるのも良いかもしれない。良きも悪きも混乱しすぎ。さてさて、たかが大麻、されど大麻なのだ。

 

 

 

松浦 良樹〈Matsumura Yoshiki〉プロフィール

 1970年生まれ。環境問題や自然エネルギー、伝統文化などをメインテリトリーとするライターとして『AFF』『GQJAPAN』『環境ビジネス』『Earth Journal』など様々な媒体に執筆。大麻関連媒体では『HEMP LIFE』『HEMP TODAY JAPAN』など。

 NPO法人日本麻協会理事などを務め、20167月に理事・岡沼隆とともに国立京都国際会館で開催された「第1 世界麻環境フォーラム」(別名「京都ヘンプフォーラム」)と呼ばれる「IHEFInternational Hemp Environmental Forum)」の初イベントを開催した。このイベントには、世界中から大麻の専門家や産業家の他、安倍昭恵総理夫人(当時)、京都市長、京都最古の神社である上賀茂神社宮司をはじめ、大麻に理解のあるメンバーが広く参加した。

 また、蚊帳研究家として蚊帳の歴史や文化の研究に努めるとともに、ヘンプ100%の藍染の蚊帳やヘンプストロー、ヘンプフィルター、その他、衣食住に関わる大麻アイテムの開発に携わり、普及活動を続けている。

 2019年ネパールで開催された「ASIA HEMP SUMMIT」において「大麻と蚊帳の博物館の創設」「日本の祈りに関連した大麻」に向けた企画で起業家賞を受賞。

 また、タイ王国バンコクで開催された「アジア国際ヘンプエキスポ 2022 」では二大パビリオンのひとつ「golden  hemp  pavilion」の責任者を務めた。

 2023年、青淵渋沢栄一翁顕彰会〈士魂商才〉賞を受賞。

 アジア国際ヘンプEXPO2023では日本サイドの責任者として二つのブースとメインステージでのパフォーマンスをプロデュースした。

 

現在、日本の基層文化である大麻の普及と啓蒙やタイと日本を結ぶ活動などを展開中。