痛み、そして医療と嗜好のはざまで

 僕は偏頭痛持ちだ。しかも慢性で子供の時からいわゆる持病持ちだ。病気自慢ではない。多くの人が病気だけでなく何かを抱えて生きている。それはともかく、僕自身が痛みに強いというわけではなく、あまりにも通常に痛いので普段は忘れてしまっているというか痛いのが当たり前になっているというかあまり気にならないのだけれども、時折我慢できない痛みに襲われる時がある。

 そういう時に使うのは多くの人と同じように頭痛薬や痛み止めだ。用法用量を守るとあまり効かないので倍以上の量を飲む。すると吐き気と倦怠感を伴いながらもなんとか痛みは少しおさまる。用量用法を守らないことを良いとは思わないし、推奨もしないし、身体に良いとも思わないがとりあえず痛みはおさまる。痛みの種類や質はそれぞれだろうが痛みとはそういうものだと考えている。

 残念ながら僕の偏頭痛にはCBDをはじめとするカンナビノイド類はあまりというかほぼ効果がないばかりかCBDはお腹まで痛くなったりするから踏んだり蹴ったりの効果となる。頭が回らなくなるのもぼんやりするのもだるくなるのも、なんなら眠くなるのもあまり好まない。ただそれは僕には効かないし好まないということで、原因不明で市販薬も病院からもらった薬も効かず長年悩んだり苦しんだりした痛みがCBDやその他のカンナビノイド類で劇的に改善された例も何例もあることを知っているし、驚いたり喜んでいる姿も実際に見てきた。選択肢のひとつとして効く人には効くことは確かだ。

 あまり体感がないといわれるCBDすらそのような感じだ。他にもCBNCBGなどなど様々に効果があるといわれるものがあり、テルペンとのアントラージュ効果でそれなりの効果があがっているように聞く。規制といたちごっこの成分にも同じことが言える。

 だいぶ痛みというものに鈍感になりかなり麻痺してしまっている僕はともかく、痛みというのは本来本人にしか分からず、結構辛いものだ。それが痛みからくる睡眠障害に発展すればなおさらだ。これまたショートスリーパー寄りの僕には漠然としか理解できず、相談を受けても本当の辛さは理解しきれていないと思いながら対応に当たっているが、それでも痛みで寝れない、痛みで食べられない、痛みで思考が止まる、そしてなによりもとりあえず痛い、痛みを何とかしてほしい、、、という気持ちは多少理解できる。そしてたまにくる痛みで発狂しそうになるだけの僕とは違い、激しい痛みが常態化し、とにかくどんな手段でも、どんな手段を使ってもこの痛みをなんとかしたいという状況に陥っている人にとっては僕の知識は何の役にも立たず、さらに道徳や法律、社会通念や社会正義、誤解を恐れずいうとスピチュアルも恐々にいうならば宗教すら何の役にも立たない。それらは前後処理はできてもその場その瞬間の痛みに効果を発揮しない。

 痛みを抑えるのは対症療法に過ぎず、そうなる前の普段の食事や生活習慣なども大事なのは分かっていても、痛みの前にそんな理屈はどうでも良いことだ。

 さて、大麻及びカンナビノイド関連の嗜好品としてはマイナス面にとらわれがちの効果の長さやぶっ倒れるように寝ちゃうこと、これが必要な、これこそが求めている効果である人もいる。医療と嗜好の親和性は高く、必要な人にとっては合法もグレーもそれこそ脱法も違法も関係なかったりもする。是非の問題ではない。何が医療で何が嗜好なのか、そして何が作用で何が副作用なのかは意外と人それぞれだったりもする。トンデモやデタラメも多く、何だかなぁと思うこともあるが、医学や社会通念の問題ではなく個の問題としてだ。

 ただただダメ絶対で思考停止し禁止薬物に指定することは未然の事故防止という大義名分もあるのだろうがデメリットもある。使い方や用量用法があったりもする。僕には必要なくても誰かには必要かもしれないのだ。あなたには必要なくても僕には必要不可欠であるかもしれないのだ。それらは当事者しかわからないメンタルの問題も含むが誰にでも訪れる問題でもあり抱えることもある問題だ。

 10年後、100年後を見据えた議論と共に目の前の問題にも対処していくことが必要だが、

さて、大麻は、そしてさまざまなカンナビノイドはどうなっていくのだろう。たかが大麻、されど大麻。けっして他人事ではない問題だ。

 

 

松浦 良樹〈Matsumura Yoshiki〉プロフィール

 環境問題や自然エネルギー、伝統文化などをメインテリトリーとするライターとして様々な媒体に執筆。

 NPO法人日本麻協会理事などを務め、2016年7月に理事・長岡 沼隆とともに国立京都国際会館で開催された「第1回 世界麻環境フォーラム」(別名「京都ヘンプフォーラム」)と呼ばれる「IHEF(International Hemp Environmental Forum)」の初イベントを開催した。このイベントには、世界中から麻の専門家や産業家の他、安倍昭恵総理夫人(当時)、京都市長、京都最古の神社である上賀茂神社宮司をはじめ、大麻に理解のあるメンバーが広く参加した。

 また、蚊帳研究家として蚊帳の歴史や文化の研究に努めるとともに、ヘンプ100%の藍染の蚊帳やヘンプストロー、ヘンプフィルター、ヘンプなどの衣食に関わる大麻アイテムの開発に携わり、普及活動を続けている。

 2019年ネパールで開催された「ASIA HEMP SUMMIT」において「大麻と蚊帳の博物館の創設」「日本の祈りに関連した大麻」に向けた企画で起業家賞を受賞。大麻の専門店「麻草屋」代表でもある。

 また、タイ王国バンコクで開催された「アジア国際ヘンプエキスポ 2022 」では二大パビリオンのひとつ「golden  hemp  pavilion」の責任者を務めた。

 2023年、青淵渋沢栄一翁顕彰会〈士魂商才〉賞を受賞。