420に考えたこと

 420420日は世界的には大麻の日だ。

 あんまり日本では関係ないけど、日本においても「いつも心に420」を標榜する人たちも少なからず存在する。

 まぁ、アメリカ発祥(あるいはジャマイカ?)の記念日であり、大麻合法運動や社会運動でもあるんだけど、420の視点からいえば日本はだいぶ遅れている。周回遅れというよりは逆向している感がある。いわゆるバッズやTHC抜きのカンナビノイド類のみで420っていくら盛り上がっても合法、あるいは非犯罪化の国やその方向に向かっている各国の動きから見るとあまりピンとくるものではない。さらに、日本における伝統文化の視点から見るとまったく関係ない。日本の大麻における医療と嗜好の親和性に対して伝統文化と嗜好の親和性はあまりにも低い。そこには暗くて深い谷がある。断絶と言っても良いくらいだ。大麻好きとひとくくりにしても、大麻との関係性はさまざま。雑草から神の間を内包する大麻特有の問題でもあり、悩ましいところだがじっくりと考えていくしかないところだ。まったく関係ないとはいえ、医療や嗜好から大麻の伝統文化に興味を持つ人もいるし、その逆も然り。たかが大麻だが、されど大麻で幅も奥行きもあるのが大麻の面白さでもある。

 それはともかく、420は、アメリカの高校生が定期試験後に吸うために集まった時間なのか、盗みに行くための集合時間だったのか、警察の大麻の隠語だったのか、などなど諸説あるけれども、そのような50年以上前(1971年)の話が徐々に広がり大麻を吸う隠語となり、大麻に関するイベントの日程になり、さらに大規模集会やデモに発展し、やがて「420」が大麻の日として認知されるようになっている。

 日本においてはさまざまイベントは開催されているが420はまだまだ遠い国の物語に過ぎず、大麻好きの小規模な集まりであったり、THCを除くCBDやカンナビノイド類のPRイベントとならざるを得ないし、逆な見方をするならば、嗜好品としての大麻が違法な国・日本で表裏において420イベントを地道に継続し芽を蒔き続けて来れていることは驚愕に値するしかない。合法化、あるいは非犯罪化された国、そしてその方向に向かっている国においても地道な活動や運動がきっかけを作ってきたことは間違いはなく、医療の分野においても医者や研究者や専門家を名乗る人々よりもいわゆるアンダーな人たちの経験と知識が優っている場合も多く、彼らの経験や知識の裏付けとして現代医療としてのエビデンスが追いかけている状況もある。

 それはともかく、なんなら88日の葉っぱの日とか、1日前の8月7日を花の日とかの語呂合わせの方が日本にはしっくりくるのかもしれない。都市伝説なのかなんなのか、日本ではバッズ部分を捨ててまさしく葉っぱ部分、いわゆるリーフを喜んで吸っていたと言う話もあるくらいなんだし。まぁ、どちらにしろ社会に広く認知されれば、アメリカやカナダ、オランダのように多くの都市で音楽やアート、産業としての大麻の大規模なイベントなどが開催されるようになったりもするだろう。仲間内ではない公のジャパンカナビスカップも夢ではなくなるかもしれない。

 ハロウィンやクリスマスのイベントと同じで、楽しむための方便としては良いのかもしれない。法改正もイベントも黒船っていうのは何かひっかりがあるが、楽しんだもん勝ち、どうせなら楽しむ、どうせなら利用するっていうのは悪くないし、世界の大麻愛好家や運動家と繋がったり情報交換するには良い機会だろう。なんにしろ日本においては「みんなが盛り上がった」という一部の盛り上がりはみせても日本社会が動くほどにはまだまだ「みんな」は盛り上がってもいないし420は浸透していない。

 とはいえ、今が大麻が浸透するかしないかの何度目かのチャンスでもある。多くの国が合法化や非犯罪化に向かってはいるが、反対に厳しさを増している国も多い。日本はまさしく規制強化の方向に向かっている。ただし、向かっているということはまだ過渡期ということだ。今だからこそやれること動けること準備すること、できることがあるに違いない。

 さて、420もなんとなく通り過ぎ、次は花か葉っぱの日を目指して何かが動き出すのだろうか。そしてグダグダしてる間に秋の法改正になり、あっという間に2025年から施行されちゃうのだろうか。

 

 

 

松浦 良樹〈Matsumura Yoshiki〉プロフィール

環境問題や自然エネルギー、伝統文化などをメインテリトリーとするライターとして様々な媒体に執筆。

NPO法人日本麻協会理事などを務め、2016年7月に理事・長岡 沼隆とともに国立京都国際会館で開催された「第1回 世界麻環境フォーラム」(別名「京都ヘンプフォーラム」)と呼ばれる「IHEF(International Hemp Environmental Forum)」の初イベントを開催した。このイベントには、世界中から麻の専門家や産業家の他、安倍昭恵総理夫人(当時)、京都市長、京都最古の神社である上賀茂神社宮司をはじめ、大麻に理解のあるメンバーが広く参加した。

また、蚊帳研究家として蚊帳の歴史や文化の研究に努めるとともに、ヘンプ100%の藍染の蚊帳やヘンプストロー、ヘンプフィルター、ヘンプなどの衣食に関わる大麻アイテムの開発に携わり、普及活動を続けている。2019年ネパールで開催された「ASIA HEMP SUMMIT」において「大麻と蚊帳の博物館の創設」「日本の祈りに関連した大麻」に向けた企画で起業家賞を受賞。大麻の専門店「麻草屋」代表でもある。また、タイ王国バンコクで開催された「アジア国際ヘンプエキスポ 2022 」では二大パビリオンのひとつ「golden  hemp  pavilion」の責任者を務めた。