タイトルは〈塩化ナトリウム〉と〈硫酸アルミニウムカリウム〉と〈炭酸水素ナトリウム〉の化学式だ。ナトリウムだの硫酸だのなんだか怖そうなイメージだが、なんのことはない、塩とみょうばんと重曹だ。食品にも使われる日常の中にあるものでも化学式だとなんだか親近感が一瞬で消えてしまう。
とはいえ、例えば化学上はNaCl=塩化ナトリウム=塩なんだけど、NaCl=塩化ナトリウム≒塩とも言えるから厄介だ。いわゆる食塩にも種類があり、日本では大きく天然塩・精製塩・再製加工塩の3つに分類される。普段目にする塩、いわゆる食塩は純粋な塩(NaCl)ではない。普段、塩味というときのしょっぱさのベースは塩化ナトリウムだ。苦味やコクを感じるのはマグネシウム。甘味はカルシウムだ。そして酸味を感じるのはカリウムなどだ。結晶の大きさなどによっても食感が変わり、塩の美味しさを左右する。私たちの持つ味センサーは本当に繊細で、99%が塩化ナトリウムでも残り1%の中に含まれるさまざまな味をキャッチして美味しさを判定するのだ。さて、好みは人それぞれだが、どの塩が好きだろうか?
◯天然塩
- 加熱処理していない、太陽の熱や風で乾燥させた塩。
◯精製塩
- 電気分解によって塩化ナトリウムを99%以上含んだ塩。
◯再製加工塩
- 天日塩を日本の海水で溶かして加熱処理して再び結晶化した塩。
ちなみに、2010年以降、 「自然塩」「天然塩」およびそれに類する用語は使用不可。「海洋深層水使用」により品質が優れていることを表示するにはその合理的な根拠を示す必要。ミネラル豊富を意味する表記は不当表示。といった「食用塩の表示に関する公正競争規約」が認定され施行されている。どの塩が良いかは使い方次第でもあり、用量と用途次第だろうが、僕自身は出来るだけ天然塩に近いものの方が料理の味に深みが出るように感じていて、出来るだけ天然塩を使いたいと考えているが、本当の天然塩ってなかなか無いし高いので大概は再生加工塩を使うことになってしまっている。
さて、カンナビス関連はどうだろう?
日本においては現状、大麻そのものは違法だし、THCについても厳しい状況にある。そして、単体のカンナビノイドだったり、大麻成分や大麻由来成分を後から混ぜ合わせたものだったり、レアカンナビノイド、合成?カンナビノイドなどなどさまざまに流通している。THCさえ入っていなければなんでもありも状況だ。より本物に近い、あるいは本物の数十倍の効果を謳うものまである。
塩に例えれば、大麻が天然塩で精製塩がCBDなどで、再生加工塩が後からいろいろ加えて調整したものという感じだろうか。そう考えるとそれぞれに味わいや深みが違うような気がするのはきっと僕だけでは無いはずだ。単体の尖った味、舌に刺さるような味となんだかまろやかだが風味や深みのある味の違いは大きい気がするのだ。それは何を求めているかにもよるのだろうが、大きな違いがある。体感なのか多幸感なのか痛みに対してなのか、それとも睡眠重視なのか、、、。今まさに世界中でレアカンナビノイドも含めてさまざまな研究が行われ、そして新たな発見がされていくさなかだ。逆に言えばどのような効果があるのかはこれから解明されていく部分も多い。安全性という意味では大麻そのものが実は一番研究されている。体感や多幸感、痛みや眠りについてもそれに合わせたさまざまな品種が開発されている。単体、あるいはレアカンナビノイド、合成カンナビノイドの安全性は未知の領域だ。それらを踏まえた上で、日本においては「捕まらない安全性」がもう一つの軸としてあり、大麻ではなくTHCなどを除く合法な成分が流通している。そしていたちごっこのように規制と新成分の流通がはじまる。濃度だけを重視するのは海外においても最初の段階だ。高濃度THCを求めたところからはじまり、逆にCBD重視になり、またそこからCBG、そしてCBNといったその他の成分に注目が向かうようになり、さらにバランスも重視されるようになった。
日本の現状はどうだろう。過渡期なのか、それとも日本独自の方向で進んでいくのだろうか。すでに医療寄りにいくのか嗜好寄りに進んでいくのか二極化は進んでいるように感じるが、カンナビノイド界隈も法改正を前に現在が方向性を決め健全化の意味を問い直すタイミングだろう。いろんな健全化があるからね。
さて、たかが大麻、されど大麻。
松浦 良樹〈Matsumura Yoshiki〉プロフィール
環境問題や自然エネルギー、伝統文化などをメインテリトリーとするライターとして様々な媒体に執筆。
NPO法人日本麻協会理事などを務め、2016年7月に理事・長岡 沼隆とともに国立京都国際会館で開催された「第1回 世界麻環境フォーラム」(別名「京都ヘンプフォーラム」)と呼ばれる「IHEF(International Hemp Environmental Forum)」の初イベントを開催した。このイベントには、世界中から麻の専門家や産業家の他、安倍昭恵総理夫人(当時)、京都市長、京都最古の神社である上賀茂神社宮司をはじめ、大麻に理解のあるメンバーが広く参加した。
また、蚊帳研究家として蚊帳の歴史や文化の研究に努めるとともに、ヘンプ100%の藍染の蚊帳やヘンプストロー、ヘンプフィルター、ヘンプなどの衣食に関わる大麻アイテムの開発に携わり、普及活動を続けている。
2019年ネパールで開催された「ASIA HEMP SUMMIT」において「大麻と蚊帳の博物館の創設」「日本の祈りに関連した大麻」に向けた企画で起業家賞を受賞。大麻の専門店「麻草屋」代表でもある。
また、タイ王国バンコクで開催された「アジア国際ヘンプエキスポ 2022 」では二大パビリオンのひとつ「golden hemp pavilion」の責任者を務めた。
2023年、青淵渋沢栄一翁顕彰会〈士魂商才〉賞を受賞。