「トロッコ問題」にもならない善意の殺人?!

 大麻でできること、人としてできることは限られている。

 元旦。一杯ひっかけてほろ酔い気分で初風呂を楽しんでいた時に地震の話がそれとなく聞こえてきたんだけど、揺れは感じないし、「正月早々地震かよ」くらいのゆったりのんびりした気分は湯上がりに観たニュース速報で吹き飛び、パンツ一枚で灰皿を持ってウロウロした東日本大震災、そして変わり果てた宮城県石巻の海岸線などがフラッシュバックして一瞬で湯冷めに近い寒さが込み上げてきた。

 1月8日現在、令和6年 能登半島地震は200人近い死亡が確認され、まだまだ増えていく。現在でも被害の全容把握はできず、安否不明者の捜索や必要物資や必要人材を届けるための道路復旧などが急務となっている。地震発生と同時にさまざまな観点から動き出した人も多い。「何かできることはないか」という想いは理解できる。家族や友人など身近な人がいる人は特にそうであり、現地入りを止める理由はない。ないんだけど。

 ないんだけど、ただ、まったく目的の違うこれ幸いと現地入りしたらしい窃盗団の素早い動にほとほと感心するざわつく感情はともかく、現状、災害支援・救助として「何かできることはないか」という想いだけで素人ができることは何もなく、逆に交通渋滞やガソリンや食料不足などを引き起こし、支援・救助の妨げになることは経験済みの人も多いはずなんだけど、やはりその問題は今回も出てくるんだよなぁ。

 何かできるのは、食料・燃料、そしてトイレなどを自己調達・自己処理することができ、かつ救助・支援のなんらかのノウハウや技術を持つスペシャリスト。そうでなければまずは何もしないのが支援となる。電話一本ですら通信網の障害となり救える命を救えなくしているかもしれないのだ。もしかしたら瓦礫の下で助けを待ってて充電切れたらヤバいかもとかって想像できないかなぁ。安否確認で安心するのは電話をかけた方で、助けを待つ側ではないよね。素人ができることは限られている。何もできないは諦めではなく、地震発生時に現地にいない以上、何もしないが素人にとっての最適な行動だ。特に発生後72時間に素人ができることはほぼ無い。想いは想いとして正しいが、想いは想いで止めることが必要だ。想いを優先し「考える前に行動」は善意の押し売りであり、ひいては善意の殺人に繋がることを考えるべきだろう。素人の「何かできることはないか」は心理学の「トロッコ問題」よりタチが悪い。祈ったり祈りを送るのは良いにしてもリアルな物資は必要物資の輸送の妨げにもなることもある。もうひと想いが大切なように思う。達観や諦めではない何もしないという行動も大切なのだ。

 有名ラッパーが窃盗団に対して発言して炎上していたが、窃盗などはまったくあり得ない行為で悪意ある行動だが、善意もまた悪意と同様の結果を生み出すこともあることを考える必要がある。100歩譲ってもTengaは今ではない。数秒の遅れで人命救出作業から死体発掘になってしまう可能性もあるのだ。そのことをよく知っているスペシャリストたちの行動や心身の邪魔をしてはいけない。経験豊富なボランティア団体や個人は着実に現地入りしたり準備を進めている。

 海外も大事だが国内が先じゃないかなぁ、とか、台湾の救援スペシャリストチームを断ったりした政府の後手後手な対応などはモヤモヤもある。陸路がダメなら海路や空路もあるだろうになどのモヤモヤもある。スペシャリスト中のスペシャリストが羽田で亡くなってしまったのは残念でならない。売名のそしりをものともしない高額寄付の有名人や、さすが現場は強いなぁ、と大麻でない方の山本太郎には感心する。当たり万馬券を全額寄付するお笑い芸人はよっぽど気が利いている。マスターベーション的自己肯定感や自己顕示欲的な祈りや行動に嫌悪しつつ何もできない自分への嫌悪と苛立ちもある。

 ようやくだが道路規制やボランティアの受け入れもはじまった。さまざまな寄付サイトもある。素人が何かできるのはこれからだ。なんだか炎上していたが、これからCBDやCBNなども役に立つに違いない。たかが大麻、されど大麻なのだ。

落ち着いたら知り合いに会いがてら、金沢に美味しい酒と美味しいものでも求めに行こうと思う。

 

 

 

 

松浦 良樹〈Matsumura Yoshiki〉プロフィール

 環境問題や自然エネルギー、伝統文化などをメインテリトリーとするライターとして様々な媒体に執筆。

 NPO法人日本麻協会理事などを務め、20167月に理事・長岡 沼隆とともに国立京都国際会館で開催された「第1 世界麻環境フォーラム」(別名「京都ヘンプフォーラム」)と呼ばれる「IHEFInternational Hemp Environmental Forum)」の初イベントを開催した。このイベントには、世界中から麻の専門家や産業家の他、安倍昭恵総理夫人(当時)、京都市長、京都最古の神社である上賀茂神社宮司をはじめ、大麻に理解のあるメンバーが広く参加した。

 また、蚊帳研究家として蚊帳の歴史や文化の研究に努めるとともに、ヘンプ100%の藍染の蚊帳やヘンプストロー、ヘンプフィルター、ヘンプなどの衣食に関わる大麻アイテムの開発に携わり、普及活動を続けている。

 2019年ネパールで開催された「ASIA HEMP SUMMIT」において「大麻と蚊帳の博物館の創設」「日本の祈りに関連した大麻」に向けた企画で起業家賞を受賞。大麻の専門店「麻草屋」代表でもある。

 また、タイ王国バンコクで開催された「アジア国際ヘンプエキスポ 2022 」では二大パビリオンのひとつ「golden  hemp  pavilion」の責任者を務めた。

 2023年、青淵渋沢栄一翁顕彰会〈士魂商才〉賞を受賞。

 アジア国際ヘンプEXPO2023にも日本サイドの責任者として二つのブースとメインステージでのパフォーマンスをプロデュースした。