日本の法律が合法なり非犯罪化するまではと自分に言い聞かせていることがある。
「持たず」「育てず」「人前で吸わず」だ。自分で作ったこの縛り、結構面倒臭い。3つの条件が揃うことが無いから、条件をクリアする状況になることがない。どうしたもんだか。まぁ、僕のやりたいことは伝統文化や繊維がメインの領域でもあるし、捕まってる場合じゃないし、現状、持つ気も育てる気も人前で吸う気もないからどうでも良いんだけど。
それはともかく、世界に目を向けると、売買で死刑のエジプト、 200g所持で死刑のマレーシア、500g以上の所持で死刑のシンガポール、たまーに死刑もあってしかも公開死刑というサウジアラビア、そしてイランやUAE、オマーン、バーレーンなどなどをはじめ、厳罰の国もまだまだ多い。UAEは血液中から検出でも逮捕、靴底に0.003g付着してたとかでも禁錮4年といった事例もあるようだ。また、実質的な合法化に踏み切ったタイも近年までは大麻を含む薬事犯を250人以上死刑にした厳罰国で、今月行われた選挙による大麻反対の野党の躍進もあり、またそうならないとは限らない。WHOがフェーズを下げたといっても好きなように使って良いよとなっているわけではなく、毒にも薬にもならないどうしようもないものという定義から外れたに過ぎない。世界の流れとしては先進7カ国、、、日本が先進国かどうかはさておき、日本以外のG7といわれるフランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、カナダは国の管理の元での合法(規制)化に舵を切っているが、日本においては所持だけで営利目的でなければ初犯は大概執行猶予付きだし、自分のものではないと言い張れば裁判になる前に逃げ切れることもある。
出典: https://en.wikipedia.org/wiki/Legality_of_cannabis
法律上はともかく、運用としては意外と日本は大麻に優しい国なのかもしれない。ただし法律上の問題であって社会的には抹殺に近いダメージを負うことになる。日本においては吸うことより捕まることが問題、といわれる所以だ。
罪を認めず、争ったからといって罪が重くなるわけではないし、執行猶予期間が少し延びたり縮んだり、国選弁護人の場合、裁判費用がついたりつかなかったりすることはあるかもしれないが、謝罪したからって罪が軽くなるわけでもない。
吸いたいやつは海外に行け、という意見もあるが、日本人は海外に行こうが国内法に縛られるし、行く国を間違えるととんでもないことになる。大概の人は逮捕されるとさっさとごめんなさいしてサクッと裁判を終わらせることを弁護士は勧めるし、本人も早く裁判を終わらせて拘置所を出て娑婆に戻ることを望む。捕まった瞬間は、まわりはサッと居なくなるのが常だし、不起訴であっても裁判でどのような判決が出ようともそれまで通りの社会生活が送れる人は稀だ。そう言った意味では逮捕されたことを不服として裁判闘争を行なうことは覚悟のいることに違いない。
法は法、といってしまっては元も子もないが、人権や法の根拠を根本から問いかける法廷闘争は無罪を勝ち取るという意味では勝ち目は限りなく無いに等しいが、大麻のあり方や法のあり方について一石を投じるという意味では大いに意味のある行為だろう。まぁ、逮捕された本人の大麻との関係性の深さや向き合い方の問題だから、吸う吸わない、所持したしてない、育てた育ててないとかは法の問題は別にして大した問題ではない。逮捕はきっかけに過ぎない。逮捕によって迷惑をかけたならそれはかけた人には謝るしかないだろうが、関係ない人にまでとやかくいわれることでもない。この問題は大麻のことだけじゃないけどね。
イキって「持たず」「育てず」「人前で吸わず」なんて言ってはいるがこんなことは日本では当たり前のことをに過ぎなくて、書いといて言うのもなんだが小っ恥ずかしいことだ。まぁ、何が当たり前で普通のことなのかは時代や地域によって変わっちゃうもんだから、そんなこと言ってイキってた時もあったなぁと懐かしく思えるような時が生きてる間には実現すれば良いが、日本の状況は逆に向かっている。それを嬉々として追従する考え方には僕は追従することはできないけれども。嗚呼、「波を聞いてくれ」の小芝風花ようなゲスさと可愛さと一周まわった協調性が欲しい。されど大麻、と言いながら、たかが大麻と軽やかに時代を乗り越えていきたいものだ。
松浦 良樹〈Matsumura Yoshiki〉プロフィール
環境問題や自然エネルギー、伝統文化などをメインテリトリーとするライターとして様々な媒体に執筆。
NPO法人日本麻協会理事などを務め、2016年7月に理事・長岡 沼隆とともに国立京都国際会館で開催された「第1回 世界麻環境フォーラム」(別名「京都ヘンプフォーラム」)と呼ばれる「IHEF(International Hemp Environmental Forum)」の初イベントを開催した。このイベントには、世界中から麻の専門家や産業家の他、安倍昭恵総理夫人(当時)、京都市長、京都最古の神社である上賀茂神社宮司をはじめ、大麻に理解のあるメンバーが広く参加した。
また、蚊帳研究家として蚊帳の歴史や文化の研究に努めるとともに、ヘンプ100%の藍染の蚊帳やヘンプストロー、ヘンプフィルター、ヘンプなどの衣食に関わる大麻アイテムの開発に携わり、普及活動を続けている。
2019年ネパールで開催された「ASIA HEMP SUMMIT」において「大麻と蚊帳の博物館の創設」「日本の祈りに関連した大麻」に向けた企画で起業家賞を受賞。大麻の専門店「麻草屋」代表でもある。
また、タイ王国バンコクで開催された「アジア国際ヘンプエキスポ 2022 」では二大パビリオンのひとつ「golden hemp pavilion」の責任者を務めた。
2023年、青淵渋沢栄一翁顕彰会〈士魂商才〉賞を受賞。